2024年9月5日 9:00 am

公正証書とは、私人(個人又は会社その他の法人)からの嘱託により、法律行為その他私権について、公務員である公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことです。

一般に、公務員が作成した文書を公文書といい、私人が作成した文書は私文書とされています。

公文書は、公正な第三者である公務員がその権限に基づいて作成した文書であるため、私文書と比べ、「文書の成立について真正である」との強い推定が働きます。

そのため、公証人が当事者の嘱託により作成した文書には、公正の効力が生じ、反証のない限り、極めて強力な証拠力を有しているとされています。

 

◇公正証書の種類◇

 

 

公正証書には、

 

●法律行為に関する公正証書

(契約や遺言等)

●私権に関する事実についての公正証書

(特許等の知的財産権の管理や貸金庫の開扉、尊厳死宣言等)があります。

 

➀法律行為に関する公正証書

 

・当事者間の契約に関する公正証書

 

土地や建物の売買、賃貸借、金銭消費貸借等の契約に関する公正証書が一般的ですが、

それ以外にも、機械器具のリース契約等の法令や公序良俗に反するなどの無効原因がなく、

行為能力の制限による取消しの対象とならない限り、どのような内容の契約でも公正証書を作成することができます。

 

 

・嘱託人による単独行動に関する公正証書

 

当事者間の合意を契約として公正証書にするだけでなく、嘱託人一人の意思表示の内容を文書で明らかにする単独行為に関する公正証書の作成も可能です。

遺言は、その典型であり、遺言者による単独の法律行為です。

具体的には、遺言者が自分の死後に、

・その財産を「誰にどのような割合で残すのか」を決める

・自分を虐待するなどした相続人を廃除する

・婚外子を認知する

・先祖のお墓を誰に守ってもらうかを定める 等を定めることができます。

遺言公正証書は、遺言者の話した遺言の内容を公証人が聞き取り、その内容を公正証書にまとめて作成します。

 

 

②私権に関する事実についての公正証書(事実実験公正証書)

 

事実実験公正証書とは、公証人が自ら実験をし、認識した結果から作成する公正証書のことをいいます。

(例)

・特許権者の嘱託により、特許権の侵害されている状況を記録した事実実験公正証書を作成する場合

・相続人から嘱託を受け、相続財産把握のため被相続人名義の銀行の貸金庫を開披し、

その内容物を点検・確認する事実実験公正証書を作成する場合 等が挙げられます。

 

作成された事実実験公正証書は、その原本が公証役場に保存される上、公務員である公証人によって作成された公文書として高度の証明力を有します。

また、人の意思表示や供述の内容もこの証書で証拠化することができるため、将来の紛争を防止するという目的に使用することもできます。

 

 

◇本人しかできない公正証書◇

 

➀遺言

遺言は、公証人が遺言者から遺言の内容を聞き取り、聞いた内容を公正証書に記載します。

記載した内容は、遺言者と証人2人以上の前で読み上げ、遺言者はその内容に対して間違いがないか確認する必要があるため、代理人によって作成することはできません。

しかし、代理が許されないといっても、第三者が関与してはならないという趣旨ではないため、遺言公正証書作成の準備段階において遺言者本人の家族や士業者らの関係者が本人の使者として遺言作成に必要な資料を公証役場に持参し、本人の意思を公証人に伝えることは問題ありません。

 

②任意後見や遺言信託等

任意後見や遺言信託等といった、公証人が委任者本人の判断能力及び契約意思を確認する必要がある契約については、原則代理人による作成が認められていません。

しかし、委任者が入居している老人ホームにおいてコロナウイルス等の感染状況により面会を禁止している等の事情がある場合に限っては、例外的に代理による作成も認められる場合があります。

 

 

③保証意思宣明公正証書

保証意思宣明公正証書とは、保証人になる者が保証の意味やリスクを十分に理解しないまま、安易に保証契約を締結することを防ぐことを目的としています。

作成時には、公証人が保証人になる者に対し、保証意思の確認をしたうえで作成をするため、代理人がすることはできません。

 

上記➀~③以外の場合は、本人はもちろんのこと、本人の委任状を持った代理人でも、公正証書の作成ができます。

 

<参照>

公正証書 | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)

 

 

 

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