令和元年の会社法改正により、成年被後見人・被保佐人が取締役等に就任できる道が開かれました。
取締役等への就任手続き
欠格条項が削除されたとはいえ、成年被後見人・被保佐人が無条件に就任できるわけではありません。
本人の意思と一定の保護者の関与を確保するため、以下の手続きが必要とされています。
(1)成年被後見人が取締役等に就任する場合
成年被後見人が取締役等に就任するためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
①成年後見人が成年被後見人の同意を得る
(後見監督人がいる場合は被後見人および後見監督人の同意)
②成年後見人が、成年被後見人に代わって就任の承諾をする
→成年被後見人本人ではなく、成年後見人が代理して就任承諾をする点が特徴です。
また、後見監督人がいる場合はその同意も必要となります。
(2)被保佐人が取締役等に就任する場合
被保佐人が取締役等に就任する方法は、次の2つです。
① 保佐人の同意を得たうえで、被保佐人自身が就任承諾をする
② 代理権を有する保佐人が、被保佐人の同意を得たうえで、代理して就任承諾をする
いずれの場合も、本人(被保佐人)の意思確認が前提となります。
就任手続きに違反した場合の効果
上記の手続きを経ずに就任した場合、その就任は無効となります。
「有効だが取り消しうる」という扱いにはならない点に注意が必要です。
適法に就任した後の行為の効力
正規の手続きを経て取締役等となった成年被後見人・被保佐人が、取締役等の資格においてした行為については、制限行為能力を理由として取り消すことができません。
これは取引の安全と会社運営の安定を図るための特則です。
正規手続きを経て就任したにもかかわらず、後から「制限行為能力者だったから取り消す」という主張を認めてしまうと、会社の意思決定の安定性が著しく損なわれてしまうためです。
在任中に後見・保佐が開始した場合
欠格条項が削除された結果、在任中に後見開始の審判を受けても即座に欠格事由に該当するわけではありませんが、別の問題が生じます。
(1)後見開始の審判を受けた場合
取締役等と会社との関係は「委任」です。そのため、後見開始の審判を受けると委任の終了事由に該当し、その時点で退任となります。
もっとも、一度退任した成年被後見人を改めて取締役として選任することは可能です。
その場合は、前述した就任手続き(成年後見人が成年被後見人の同意を得た上で就任承諾)を踏む必要があります。
(2)保佐開始の審判を受けた場合
一方、取締役等が保佐開始の審判を受けても、委任終了事由には該当しません。したがって、そのまま在任を継続することが可能です。
→後見開始と保佐開始では、退任の扱いが異なる点に注意が必要です。
まとめ
令和元年改正により、成年被後見人・被保佐人が取締役等に就任できるようになったことは、単なる会社法上の手続きの変更にとどまらず、成年後見制度の利用をためらわせていた一因を取り除くという社会的な意義も持っています。
実務上は、就任手続きの要件を正確に踏むこと、そして在任中に後見開始の審判を受けた場合の退任処理を見落とさないことが重要です。
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スタッフ 上村