■成年後見制度とは?■
民法第7条によると、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。」とあります。
「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者」とは、認知症、知的障害、発達障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方(本人)について、本人の権利を守る支援者(「成年後見人」等)を選ぶことで、法律的に支援する制度です。
■成年後見制度の種類■
成年後見制度には、①任意後見制度と②法定後見制度があります。
①任意後見制度 … 判断能力が不十分になる前
②法定後見制度 … 判断能力が不十分になった後
今回説明させていただくのは、②の法定後見制度についてで、「本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所によって成年後見人が選ばれる制度」です。
■成年被後見人とは?■
成年被後見人とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」で、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者のことをいいます。
その場合、成年被後見人には必ず1名もしくは複数名の成年後見人が付されることとなります。
■成年後見人とは?■
成年後見人とは、成年被後見人に代わり財産管理と身上監護に関する法律行為を行う者です。
後見開始の審判を受けた成年被後見人に代わって契約を結んだり、取り消すこと等が可能になります。
(自己決定の尊重の観点から、日用品の購入など「日常生活に関する行為」については、取消しの対象になりません)
■成年後見人の選任方法■
成年被後見人にとってどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて、家庭裁判所が選任します。
本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「補佐」「補助」の3つの制度が用意されています。
成年被後見人の親族のほか、司法書士・弁護士・社会福祉士等の法律・福祉の専門家その他の第三者や、福祉関係の公的法人その他の法人が選ばれる場合があります。
選任された成年後見人は、
①診療・介護・福祉サービスなどの利用契約を結ぶ、取り消す
②被後見人が所有している土地や建物を売買等する際に契約を結ぶ、取り消す
③財産の管理
等ができるようになります。
今回は②の「被後見人が所有している不動産を売却する際」には、どのような手続きが必要なのかについてご紹介します。
成年後見人が、成年被後見人の*「居住の用に供する建物またはその敷地」について本人を代理して売却等これらに準ずる処分をするには、
成年被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行い、許可を得る必要があります。
成年後見人が家庭裁判所の許可を得ないで本人の居住用不動産を処分した場合には、その処分行為は無効となります。
*「居住の用に供する建物またはその敷地」とは、
・本人の生活の本拠として現に居住している建物とその敷地
・現在居住していないが過去に生活の本拠となっていた建物とその敷地
・現在居住していないが将来生活の本拠として利用する予定の建物とその敷地
のいずれかに該当するものを指します。
■家庭裁判所への申立て■
成年被後見人の居住用不動産を売却する場合には、事前に「居住用不動産処分許可」の申立てをする必要があります。
その際に必要となる書類は以下の通りです。
➀申立てに必要な書類
・申立書(KK_R3_Db01.doc (live.com))
・収入印紙 800円(申立書1枚目に貼付)
・郵便切手 84円(審判書謄本の郵送交付を希望する場合)
②添付書類
・処分する不動産の全部事項証明書
・不動産売買契約書の案
・処分する不動産の評価証明書
・不動産業者作成の査定書
③本人または成年後見人(保佐人、補助人)の住民票に変更がある場合
・変更があった者の住民票の写し又は戸籍附票
④成年後見監督人(保佐監督人、補助監督人)がいる場合
・成年後見監督人(保佐監督人、補助監督人)の意見書
売却以外にも、「抵当権設定時」「賃貸借契約締結時」「賃貸借契約の解除時」等の際は、成年後見人が成年被後見人に代わって手続きをすることとなります。
その際の必要書類に関しては、こちらをご覧ください。
居住用不動産処分の許可の申立て | 裁判所 (courts.go.jp)
不動産売却時に売主が成年被後見人の場合は、通常の売却よりも時間がかかる恐れがあります。
そのため、売却を検討されている場合は早めに許可の申立てを行うようにしましょう。
ご不明点等があればお気軽にご相談ください。
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スタッフ 丹羽