2026年8月10日 9:00 am

新築した家の登記や、相続した未登記建物の名義変更、分譲マンションを購入した際の最初の登記などは、「所有権保存登記」が関係する場面です。

そして、この登記は誰でも申請できるわけではありません。

不動産登記法74条では、所有権保存登記を申請できる者が限定列挙されています。ここを外すと、そもそも登記が通りません。

本記事では、条文の構造を押さえたうえで、具体例を通して「申請適格者」を整理していきたいと思います。

 

そもそも所有権保存登記とは

不動産の登記記録は、表題部と権利部に分かれています。

新築建物や、これまで権利の登記がされていない不動産には、権利部そのものが存在しません。この権利部甲区に初めて記録される所有権の登記が、所有権保存登記です。

つまり保存登記は「権利の登記のスタート地点」であり、これがなければ抵当権設定も所有権移転登記もできません。

 

不動産登記法74条の構造

所有権保存登記の申請適格者は、不動産登記法第74条に定められています。

(所有権の保存の登記)
第74条 所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
二 所有権を有することが確定判決によって確認された者
三 収用によって所有権を取得した者
2 区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

 

74条2項(区分建物の特則)

74条2項は、分譲マンションなどの区分建物について設けられた特則です。

区分建物については、表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できます。

ただし、敷地権付き区分建物の場合は、敷地権の登記名義人の承諾が必要です。

 

事例検討

それでは、不動産登記法74条に沿って、下記の具体的事例をもとにみていきましょう。

 

【74条1号】表題部所有者とその一般承継人

事例:新築一戸建て

Aが自宅を新築し、建物表題登記を申請。表題部所有者としてAが記録されました。

→ Aは保存登記を申請できます。

 

事例:表題部所有者が亡くなった

表題部所有者Aが保存登記をしないまま死亡し、子Bが相続しました。

→ Bは亡A名義の保存登記を経ることなく、直接B名義で保存登記を申請できます。

数次相続が発生している場合も同様に、最終の相続人が直接申請できます。

 

事例:表題部所有者が共有

A・Bが持分2分の1ずつの表題部所有者である建物。

→ 保存行為として、Aが単独でA・B共有名義の保存登記を申請できます。ただし、Aが自己の持分のみについて保存登記をすることはできません。

 

事例:表題部所有者から建物を買い受けた場合(特定承継)

表題部所有者Aから建物を買ったCは、1号の「一般承継人」ではありません。

そのため、Cが直接自己名義で所有権保存登記を申請することはできません。

→まずA名義で所有権保存登記をし、その後、AからCへの所有権移転登記をするという2段階の手続が必要です。

保存登記と所有権移転登記のそれぞれについて、登録免許税が課されます。

☝一般承継とは、相続や法人の合併のように、被承継人の権利義務を包括的に承継することをいいます。一方、売買や贈与は特定の財産だけを取得する「特定承継」であり、74条1号の「一般承継人」には含まれません。

 

【74条2号】確定判決によって所有権を確認された者

事例:売主が登記に協力しない

Cは表題部所有者Aから未登記建物を買い受けたが、Aが登記手続に協力しない。。

→ CはAを被告として訴訟を提起し、自己に所有権があることが確定判決で確認されれば、直接C名義で保存登記を申請できます。

申請人の所有権が確認された確定判決であれば、給付判決・確認判決・形成判決のいずれでも差し支えありません。

ただし、判決は確定している必要があります。仮執行宣言が付されていても、判決が確定していなければ保存登記を申請することはできません。

また、和解調書・認諾調書・調停調書など、確定判決と同一の効力を有するものも含まれます。

被告は表題部所有者(またはその相続人)である必要があります。無関係の第三者を被告にした判決では意味がありません。

 

【74条3号】収用によって所有権を取得した者

土地収用法等による収用は原始取得であり、前所有者の権利は消滅します。

 

【74条2項】区分建物の特則

分譲マンションを想定した規定です。

事例:新築マンションの購入

デベロッパーD社が新築マンションの表題登記をし、各専有部分の表題部所有者となった。購入者Eが101号室を買った。

→原則どおりに「D社名義の所有権保存登記」と「D社からEへの所有権移転登記」を行うと、各専有部分について二段階の登記が必要となり、登録免許税の負担も大きくなります。

そこで74条2項により、Eは直接自己名義で保存登記を申請できます。

 

⚠敷地権付きの場合の注意点⚠

その区分建物が敷地権付きであるときは、敷地権の登記名義人(=土地の所有者、通常はD社)の承諾を証する情報が必要です。

保存登記が敷地権にも及ぶため、土地所有者の意思を確認する趣旨です。

通常の所有権保存登記では、登記原因およびその日付は登記事項となりません。

一方、敷地権付き区分建物について74条2項により保存登記を申請する場合には、例外的に「令和○年○月○日売買」のように、登記原因およびその日付が記録されます。

これは、敷地権については実質的に所有権移転登記の性質を有するためです。

 

番外:登記官の職権による保存登記【76条2項】

74条とは別に、申請によらず保存登記がされる場合があります。

 

(所有権の保存の登記の登記事項等)
第76条
2 登記官は、所有権の登記がない不動産について嘱託により所有権の処分の制限の登記をするときは、職権で、所有権の保存の登記をしなければならない。

未登記不動産について、裁判所等から処分の制限の登記(差押え・仮差押え・仮処分)の嘱託があったとき、登記官は職権で所有権保存登記をします。

 

 

まとめ

不動産登記法74条は、「誰が最初の所有権登記を申請できるのか」を定めた重要な条文です。

一般承継人と特定承継人の違いや、区分建物の特則などを理解しておくことで、余分な登記を経ることなく適切な手続きを進めることができます。

特に未登記建物の相続や売買などは判断が難しい場面も少なくありません。申請方法に迷われた際は、司法書士へご相談ください。

 

未登記建物の相続や保存登記、その他登記手続きでお困りの際は

豊田市の司法書士スパークル総合法務事務所までお気軽にご相談ください。

スタッフ 上村