
近年、所有者不明土地や空家等が全国的に増加しており、公共事業の推進や生活環境面において様々な課題が生じています。
所有者不明土地や空家等の問題については、以前のブログをご参照ください。
今回は所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題について、行政機関がどのように取り組んでいるかを説明したいと思います。
【固定資産税の納税義務者について】
固定資産税は、固定資産の所有者に課税されます(所有者課税の原則)。
①土地(田んぼ、畑、住宅地、池沼、山林、鉱泉地(温泉など)、牧場、原野などの土地)
… 原則、登記簿や土地補充課税台帳に所有者として登録されている者
②家屋(住宅、お店、工場(発電所や変電所を含む)、倉庫などの建物)
… 原則、登記簿や家屋補充課税台帳に所有者として登録されている者
(未登記の場合、家屋補充課税台帳上の所有者)
③償却資産(会社等(事業者)が所有する構築物、飛行機、船、車両や運搬具(鉄道やトロッコなど)、備品(パソコンや工具など))など
… 原則、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者
※登記簿や土地・家屋補充課税台帳上の所有者が死亡している場合は、「現に所有している者」(通常は相続人)が納税義務者となります(相続人が複数いる場合は、相続人の共有となる)。
※相続人のあることが明らかでない場合、相続財産は法人となり、相続財産管理人に対して納税通知書を送付。
【現に所有している者(相続人等)の申告の制度化】
登記簿上の所有者が死亡している場合、これまで課税庁は「現に所有している者」の把握の為、法定相続人全員の戸籍の請求など、調査事務に多大な時間と労力を割いてきました。一方、納税義務者特定の迅速化・適正化の為、独自に、死亡届の提出者等に対し「現に所有している者」の申告を求めている団体が多く、令和2年度税制改正において、市町村の条例で定めるところにより、氏名・住所等の必要な事項を申告させることが出来るようになりました(令和2年4月1日以降の条例の施行の日以後に現所有者であることを知った者について適用)。
【使用者を所有者とみなす制度の拡大】
固定資産を使用している者がいるにもかかわらず、所有者が正常に登記されていない等によって、調査を尽くしても所有者が一人も特定できないケースや、使用者からも調査に協力を得られない等、所有者特定に支障があるケースがあります。
<例> ①死亡した登記名義人から賃借していた者が居住を継続
②登記が正常に記録されていない土地で店舗を営業
③相続放棄した者とその関係者が居住
④外国籍の所有者が死亡し、相続人が特定できない(国内に戸籍等が存在しない)
こうしたケースについては、誰にも課税できず、問題となっていました。
そのため、令和2年度税制改正において、調査(住民票・戸籍等の公簿上の調査、使用者と思われる者やその他関係者への質問等)を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合、事前に使用者に対して通知した上で、使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課すことができることとされました(令和3年度分以後の固定資産税について適用)。
固定資産税として納付されたお金は、徴収した市町村により、道路や学校、公園など、日々の生活で利用する公共施設の整備のほか、介護・福祉などの行政サービスにも使われています。適切に固定資産税を納める為に、土地や建物の所有者が亡くなった際には、相続人が迅速に「所有権移転登記」を行う必要があります。
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スタッフ 倉橋