
根抵当権の元本確定とは
元本の確定とは、根抵当権の被担保債権が流動性を失い、根抵当権により担保される債権の元本が確定することをいいます。元本確定すると、以下の債権のみが当該根抵当権によって担保されます。
➀確定時に現存する債権
②確定時に根抵当権で担保されている元本の付随債権
③確定時に発生原因の存する将来の債権
共有根抵当権の元本確定
根抵当権者が複数である根抵当権を「共有根抵当権」といいます。
すべての共有者について確定事由が生じ、その確定時期が到来した時に根抵当権全体として元本が確定します。
共用根抵当権の元本確定
1つの根抵当権で債務者が複数の根抵当権を「共用根抵当権」といいます。
根抵当権の債務者が複数の場合で、そのうちの一人に元本確定事由が生じても、根抵当権は確定しません。
共同根抵当権の元本確定
設定の登記と同時に同一の債権の担保として、数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記のされた根抵当権を「共同根抵当権」といいます。
1つの不動産について確定事由が生じた場合でも元本確定します。
登記申請手続
元本確定後でなければすることのできない登記は、原則として元本確定の登記をした後でなければすることができません。ただし、登記記録上元本確定していることが明らかな場合には、前提として元本確定の登記は要しないとされています。
また、原則として設定者が権利者、根抵当権者が義務者となり共同申請をすることが必要ですが、一部単独申請が認められるケースがあります。
【元本確定登記が不要なケース】
➀確定期日が登記されていて、その確定期日が到来した
②根抵当権者又は債務者の相続による移転・変更の登記がされたが、指定根抵当権者または指定債務者の合意の登記がされずに相続の日から6か月を経過した
③根抵当権者の申立てにより競売等の手続きが開始され、差し押さえの登記がされている
④根抵当権者によって滞納処分による差押えの登記がされている
⑤特定債権のみを担保する債権の範囲の変更登記がされている
【元本確定登記が必要なケース】
➀根抵当権者又は債務者に合併が生じ、根抵当権設定者が適法に確定請求をした
②根抵当権者又は債務者を分割会社とする会社分割が行われ、根抵当権設定者が適法に確定請求をした
③根抵当権設定者が根抵当権設定のときから3年経過後に確定請求をした
④根抵当権者が確定請求をした
◆確定請求をいつしたのか、登記記録からわからないので前提として元本確定登記が必要
⑤第三者が競売手続きの開始又は滞納処分による差押えをした
◆差押えの事実は登記記録からわかるものの、根抵当権者が第三者による差押え等を知った時期までは登記記録からはわからないため、前提として元本確定登記が必要
⑥債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けた
◆根抵当権設定者が自然人:破産の旨が登記されるので元本確定登記は不要
◆根抵当権設定者が法人 :破産の旨が商業登記簿には記録されるものの、不動産登記には記録されないので元本確定登記が必要。
◆債務者が破産した場合 :自然人、法人を問わず常に元本確定登記が必要。債務者は破産の登記がされることがないため
【単独申請できるケース】
➀根抵当権者が元本確定請求した場合
②当該根抵当権者以外の第三者が抵当不動産に対して競売手続の開始等をして、根抵当権者がそのことを知った時から2週間を経過した場合
③債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けた場合
④判決により元本が確定した時
※②③の登記は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければ単独申請不可
元本確定登記ができる時期
参照文献
「抵当権・根抵当権に関する登記と実務」 山田猛司
「根抵当権実務必携Q&A」 坪内秀一
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スタッフ 上村