2024年9月12日 9:00 am

以前のブログで、「特別養子縁組」制度の成立要件について説明しましたが、今回は戸籍の記載方法について詳しく説明させていただきたいと思います。

成立要件のブログについては、こちらをご覧ください。

 

養子縁組について②

 

 

「特別養子」は「普通養子」とは異なり、養子縁組によって養子と実親との関係が断絶し、養親との親族関係のみとなります。なぜ、養子と実親との関係が断絶されるような制度なのかといいますと、「子どもの福祉を図るため」という目的があるからです。実親が精神的・身体的・経済的事情により、子の監護養育ができなかったり、虐待や育児放棄など著しく不適当な監護を行うなどにより、子が利益を著しく害されている場合、その子を保護するという目的があります。

 


 

【民法817条の2による裁判確定】

特別養子縁組の戸籍の記載方法は、普通養子縁組とは異なって一見して養子であるとは判別しづらいような記載になるよう工夫されています。

家庭裁判所の審判によって縁組が認められ、特別養子縁組の届出がされますと、特別養子縁組は実親の戸籍から除籍され、一旦特別養子単独の戸籍が編製されます。この戸籍における特別養子の本籍地は、まだ実親の本籍地です。その後、その新しい戸籍から養親の戸籍に入籍します。

なお、特別養子縁組によって実親の戸籍から除籍される子の身分事項欄と、特別養子単独の新戸籍の身分事項欄には「〇年〇月〇日特別養子となる縁組の裁判確定」という記載がされています。しかし、養親の戸籍に入籍した特別養子の身分事項欄には、出生入籍日は記載されますが、その後「〇年〇月〇日民法817条の2による裁判確定」と記載されるのみで、「特別養子」という文言は記載されません。また父母欄にも実親の氏名は記載されず「養親」の記載欄もありません。父母欄に養親の氏名が記載され、続柄も養子という表記はされず、「長男」「長女」などのように実子の場合と同様に記載されます。

 

参照:(小林直人・伊藤崇・尾久陽子・渡邊竜行 共著 『相続実務に役立つ戸籍の読み方・調べ方』 ビジネス教育出版社)

 


 

この戸籍は、法務省のHPに添付の「戸籍の記載のひな形」から抜粋したものです。

※最後に特別養子である啓二郎が入籍する、養親の戸籍です。

抜粋元(https://www.moj.go.jp/content/000116681.pdf

◆養親  :甲野義太郎、梅子夫妻(結婚している夫婦が養親となることができます)

◆特別養子:啓二郎

 

 

この戸籍を例にして説明すると、

①実親の戸籍から除籍される。

②甲野啓二郎単独の戸籍が編製される(本籍地:名古屋市中区三の丸4丁目3番(実親の本籍地))

③養親である甲野義太郎の戸籍に入籍する(上記添付の戸籍)

というような流れで戸籍には記載されます。

 

 

養親の身分事項欄を見ると、特別養子縁組を行い、養子をとった旨の記載は全くありません。このように「特別養子縁組」の戸籍は、一見して養子であることが判別できないように工夫されています。実親との親子関係を完全に消滅させるのですから、養子縁組の事実を子供に知られたくない等の様々な理由から、「民法817条の2による裁判確定」と記載されるようになったのですね。

 

 

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スタッフ 倉橋