不動産の登記記録を見たとき、
「甲区や乙区に空いている部分がある」「なぜ何も書かれていないのだろう」と思ったことはありませんか?
実はこの「余白」には重要な意味があります。
◆余白とは何か
登記記録の余白は、単なる空欄ではなくその種類の権利について、「現在登記されている事項が存在しない」ことを表しています。たとえば、
- 乙区が余白なら、抵当権や根抵当権などの担保がない。
- 甲区に所有権以外の登記がないなら、所有権に関する特別な権利変動がない。
という状態です。
◆仮登記は「余白の予約」
では、その余白にこれから権利が入る予定がある場合はどうなるのでしょうか?
そこで登場するのが「仮登記」です。
仮登記はまだ完全な権利ではないものの、
「この余白、あとで使います」という席取りのような役割をもちます。
◆登記情報には実際に余白が作られる
不動産登記規則第179条では、
(仮登記及び本登記の方法)
不動産登記規則第百七十九条 登記官は、権利部の相当区に仮登記をしたときは、その次に当該仮登記の順位番号と同一の順位番号により本登記をすることができる余白を設けなければならない。
2 登記官は、仮登記に基づいて本登記をするときは、当該仮登記の順位番号と同一の順位番号を用いてしなければならない。
3 前二項の規定は、保全仮登記について準用する。
というように規定されています。
つまり、登記官は仮登記をした時点で、将来の本登記のためのスペースを確保しなければなりません。
◆事例
「AからBへの仮登記後に、Cへの所有権移転登記の本登記がされた場合」
① AからBへの所有権移転仮登記
② その後AからCへの所有権移転登記
が行われたとします。
登記記録のイメージは次のようになります。
【甲区】
1 所有権保存 A
2 所有権移転仮登記 B
(順位2の本登記用余白)
3 所有権移転 C
※ここで重要なのは、Cが所有権移転登記をしたとしても、Bのために確保された余白は残っているということです。
◆本登記が余白を埋める
その後、Bが本登記できる状態になると、登記官が不動産登記規則第179条第2項により、仮登記と同じ順位番号を使って本登記をします。
登記情報のイメージは次のようになります。
【甲区】
1 所有権保存 A
2 所有権移転仮登記 B
所有権移転 B ← 実際に登記記録に記載される(=余白が埋まる)
3 所有権移転 C ← 抹消される
4 3番所有権抹消
※仮登記の日の順位を基準に判断されます
◆なぜ第三者より優先されるのか
よく「Cはきちんと所有権移転登記をしているのに、なぜBに負けるのか?」という疑問が挙がります。
理由は単純で、Cが登記した時点で、すでにBのための余白が確保されていたからです。
Cは空いている席に座ったつもりでも、その前の席はすでに予約済みだったのです。
その為、後日Bが本登記をすると、仮登記によって確保されていた順位が実現し、Cよりも優先する結果になります。
1 AがBに「将来売る約束」 → Bが仮登記
2 AがCに売却・所有権移転 → Cが本登記
3 BがAとの約束を実現 → Bが本登記
※仮登記の効力は、「本登記をしたときに、仮登記の日付に遡る」という点にあります。
◆まとめ
登記記録の余白は単なる空欄ではありません。
・余白 … その権利が存在しない状態
・仮登記 … 余白の予約(順位の確保)
・本登記 … 予約していた余白を正式に埋める
・効力は仮登記時の順位で判断される
不動産登記規則第179条は、まさにこの「余白の予約」という考え方を制度化したものです。
登記記録を見るときは、現在記載されている登記だけでなく、
「その登記のために確保されている余白がないか」
という視点を持つと、仮登記制度の意味がより理解しやすくなるでしょう。
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スタッフ 倉橋