■相続登記制度が新しくなります■
① 令和3年4月に相続登記が義務化される法律が成立しました
② 令和6年4月に新しい相続登記制度がスタートすることになりました
③ 今後は相続登記は義務となり、放置すると罰せられる可能性もあります
■現状の相続登記とその問題点■
1 相続登記に必要な手順
相続登記をするためには、
① 亡くなった所有者(=被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本等を揃える
② 相続人同士で話し合って印鑑登録証明書を揃えて遺産分割協議書を作成する
③ 登記申請書を作成し登録免許税(手数料)を納める
等の手続きを行う必要があります。
大半の方にとっては不動産の登記申請は人生で1回か2回あるかどうかで、自分ですべての手続きをするのは、正直煩雑で面倒に感じる方も多いかと思います。
2 これまでの相続登記の問題点
これまで、相続登記は義務ではありませんでした。
もし相続した不動産を売却等して処分する場合には、相続登記は必要となりますが、所有者の家族がそのまま住み続ける場合は、相続登記しなくても罰則がなかったため、何代も手続きをしないままの方々も多くいました。相続登記は手間とコストがかかるというデメリットの反面、家族が住み続ける分には相続登記のメリットは実感しにくいものだったからです。
しかし、こういった相続登記の放置が様々な問題を引き起こしてきました。
例えば、所有者が亡くなった際の相続登記をしないまま年月が経過し、相続人も次々と亡くなり、何代も放置した結果、最終的に該当の相続人が50人を超えてしまう……というケースも中にはあるようです。
仮に土地を購入したいと思う人がいても、多すぎる相続人の追跡調査が困難を極め、取引を断念、結果、有効活用されずに空き地として放置される、ということもあります。
建物については、誰にも管理されず老朽化して廃墟のようになり、近隣に危険をもたらす、ということも。
こういった事例については、「所有者不明土地・建物問題」として、テレビでしばしば報道されているのをご覧になった方もいるかと思います。
■新しい相続登記制度について■
こういった問題点を解決するために改正されたのが今回の法律で、令和6年4月1日には新しい制度がスタートします。
1 義務化とその罰則
新制度がスタートすると相続登記は義務とされ、正当な理由がないのに、不動産の相続を知ってから3年以内に相続登記の申請をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります(関係者が多くて必要書類の収集が困難、等の正当な理由がある場合は除く)。
2 相続登記申請がすぐには難しい場合
新制度開始後も、相続人の間で話し合った遺産分割協議の結果を踏まえた登記申請にはなりますが、この話し合いで決着をつけるのが難しい場合は、新しく作られた「相続人申告登記」という手続きをとることで、ひとまず義務を果たすことができます。
これは、「自分が相続人の一人である」と申告し、それを示す戸籍を提出する手続きで、他の相続人の同意がなくても一人でも行うことができるものです。
3 これまで相続登記を放置していた不動産も対象
この相続登記義務化は、令和6年以降に所有者が亡くなった場合だけではなく、過去にさかのぼって適用されます。
例えば昭和60年に亡くなった所有者や、平成25年に亡くなった所有者の名義変更をしていなかった場合、令和6(2024)年4月1日の制度スタートから3年以内(令和9(2027)年3月31日まで)に登記申請をしなくてはいけません。
4 新たに導入されるその他の方策
この「相続登記の申請義務化」以外にも、登記名義人の住所変更申請の義務化や手続きの簡便化等、「所有者不明土地」問題の発生を予防する方策が、複数導入される予定となっています。
■まとめ■
このように、自分や家族が不動産を所有している場合、遅かれ早かれ相続登記をしなくてはいけない時期がやってきます。
「あれ、そういえば、20年前に父親が亡くなったときの自宅の相続登記はどうなってるんだろう?」などと、登記の現況が把握できていない不動産がある場合は、早めに調べて対応された方が良いでしょう。
※現在の状況は、法務局で不動産の登記簿(登記事項証明書)を取得すれば確認することができます。コンピュータ化されていますので、遠方の実家の不動産でも最寄りの法務局で確認することができます。また、オンラインで確認することも可能です(いずれも有料)。
新制度の開始は令和6年4月1日からに決まりました。制度の開始を待って相続登記の申請を行っても、法務局が混み合って登記内容の反映まで時間がかかり、売却したいタイミングを逃すことも、可能性としてあるかもしれません。
過去の相続登記については、新制度開始を待つ必要はありません。
相続登記の手続きや罰則に不安がある方、自分で申請するのは面倒だという方は、どうぞお早めに司法書士までご相談ください。
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スタッフ 斉藤
(2023(令和5)年4月24日加筆修正)