
過去のブログで、古い抵当権の抹消手続きについてご案内しました。
休眠担保権や供託手続きについては、上記のブログをご参考ください。
古い担保権を供託手続きの利用で抹消する場合、貨幣価値が現在までの間に大きく変動しているため、債権額を現在の価値にすると、かなり少額なケースでは比較的容易に行えます。
しかし、今後は債権額が高額なケースが多くなると考えられ、このような場合は供託手続きが難しくなることから、今回のような、供託手続きが不要になる方法が新設されました。
今回は、古い抵当権でも、供託手続きを行わずに単独で抹消できる方法をご紹介します。
この方法は、不動産登記法70条の2の規定によるものです。
抹消するための要件
この方法により抹消するためには、次の要件を満たす必要があります。
①登記義務者が、解散した法人であること
担保権者である法人が実質を喪失し、登記手続きへの協力を得ることが困難なときのための制度です。よって、法人の登記から解散していることの確認が必要です。
解散とみなされたものや、根拠法の廃止等に伴い解散することとされた法人も含まれます。
②登記義務者である法人の解散から30年が経過していること
解散した法人は、清算手続きを行う必要があることから、解散した日から清算手続きを終えるために必要とされる期間を超えるある程度の長期間が経過すれば、実質的に解散した法人としての活動も行われず、担保権を行使する意思もないと推認されます。よって、担保権を保護する必要性が年々減少していると考えられています。
この要件を満たすため、①と一緒に、解散時期の確認が必要になります。
③弁済期から30年が経過していること
債権の消滅時効期間は、原則「権利を行使することができる時から10年」とされています。よって、30年経過しているのであれば、被担保債権が消滅している可能性が高く、登記の抹消が許容される、との考えに基づいています。
この要件を満たすには弁済期の確認が必要なため、対象の物件の登記を遡り確認することなどが必要になります。
④清算人の所在が知れないこと
担保権者である法人が解散し、その清算人の所在が知れないことが要件の1つです。
商業・法人登記簿に記録された代表者である清算人が生存し、その所在が分かる場合は、その清算人と共同して登記の抹消を申請することができることになります。
よって、この制度を利用した単独での登記の抹消の申請が出来ません。
また、清算人の所在が知れないとは、「相当な調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査をしてもなお当該法人の清算人の所在が判明しないこと」とされています。「相当な調査」とは、その清算人が登記された住所に存在しないことの確認や、その住所地への郵便が届かなかったことなどの証明が必要になります。
以上、解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続きについてでした。
不動産登記法70条の2の規定を利用する場合、本来は共同申請であったものを単独で申請することになるので、書類の収集等が複雑に感じるかもしれません。
それでも、供託を行わずに担保権の抹消を行えることがあるので、便利なお手続きとなっています。
弊所では不動産登記を取り扱っておりますので、ぜひご相談ください。
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スタッフ 藤川