2024年8月8日 9:00 am

 

配偶者居住権とは、2020年4月1日より始まった制度であり、被相続人名義の自宅不動産を、「配偶者が亡くなるまでもしくは一定の期間、その不動産に無償で居住する権利(配偶者居住権)」「負担付所有権」とに分けて相続することができるというものです。

 

この制度を活用することにより、遺された配偶者の住まいについて保障することができるほか、相続税の節税対策になる場合もございます。

配偶者居住権についての詳しい説明に関してはこちらのブログをご覧ください。

 

 

配偶者居住権について

 

 

 

 


 

■相続税の節税対策■

相続発生時に「配偶者居住権を利用しない場合」と、「配偶者居住権を利用する場合」では、相続税の課税される扱いが異なってきます。

ここでは、分かりやすく「父、母、息子の3人家族の場合」を例に上げて説明したいと思います。

相続はこの例で説明すると、先に夫婦のどちらかが亡くなり配偶者と子が相続人になる時を「一次相続」、その後配偶者が亡くなり、子のみが相続人になる時を「二次相続」と呼びます。

 

 

相続発生時に「配偶者居住権を利用する場合」、一次相続では配偶者が相続した配偶者居住権は相続税の課税対象になりますが、二次相続では課税対象とされません。

なぜなら、配偶者が死亡した時点で配偶者居住権は消滅し、そもそも存在しない事となるからです。

「配偶者居住権を利用しない場合」と「配偶者居住権を利用する場合」の相続税額の具体的な違いについて、以下に詳しく説明させていただきます。

 


■配偶者居住権を利用しない場合■

(自宅を一次相続発生時に配偶者が相続し、二次相続発生時に息子が相続する場合)

 

相続対象となる遺産は自宅のみで、固定資産評価額は5,000万円とします。

(一次相続時と二次相続時で自宅の価値が変わらない場合とする。)

 

[一次相続時の相続税額]

 

①3,000万円+(600万円×2人(法定相続人の数))=4,200万円(基礎控除額)

②5,000万円-4,200万円=800万円(課税遺産総額)

配偶者の税額の軽減を適用すると、1億6,000万円までは相続税がかからないため相続税額は0円となります。

No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁 (nta.go.jp)

 

 

[二次相続時の相続税額]

 

➀3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円(基礎控除額)

②5,000万円-3,600万円=1,400万円(課税遺産総額)

③1,400万円×15%-50万円=160万円(相続税額) となります。(No.4155 相続税の税率|国税庁 (nta.go.jp)

 


■相続発生時に配偶者居住権を利用する場合■

 

相続対象となる遺産は自宅のみで、固定資産評価額は5,000万円とします。

(配偶者居住権部分の評価額:3,500万円 負担付所有権部分の評価額:1,500万円)

 

[一次相続時の相続税額]

 

➀3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円(基礎控除額)

②5,000万円-4,200万円=800万円(課税遺産総額)

③800万円÷2=400万円(1人当たりの課税遺産総額)

④800万円×10%=80万円(相続税額)

No.4155 相続税の税率|国税庁 (nta.go.jp)

・この内配偶者の相続税額は、

80万円×(3,500万円/5,000万円)=56万円

 ※配偶者の税額の軽減を適用すると、1億6,000万円までは相続税がかからないため、配偶者の相続税は発生しません。つまり、0円となります。

・息子の相続税額は、

80万円×(1,500万円/5,000万円)=24万円となります。

 

[二次次相続時の相続税額]

 

配偶者死亡により発生した二次相続では、配偶者居住権が消滅するため課税対象とはなりません。

以上の事から、

「配偶者居住権を利用しない場合」と「配偶者居住権を利用する場合」では、息子の相続税額に136万円の差が出ると説明ができます。

(※必ず節税できるという訳ではありません。)

 

しかし、配偶者居住権には

・配偶者は無償で居住建物に住み続けることができますが、建物の所有者に無断で賃貸することができない。

・配偶者は、建物の所有者の承諾がなければ,居住建物の増改築をすることはできない。

・配偶者の居住を目的とする権利のため、第三者に配偶者居住権を譲り渡すことはできない。

・配偶者居住権の存続期間満了時に放棄等で配偶者居住権が消滅した場合には、配偶者から建物所有者及び敷地所有者に、

建物の使用収益権の贈与があったものとみなされ、贈与税が課税される。

等のデメリットもあります。

※配偶者居住権を放棄する場合、放棄によって利益を受ける建物の所有者から、対価として金銭の支払を受けることは可能です。

 

 

そのため、配偶者居住権を検討されている方は、他の相続人や税理士等に相談してから決めることをお勧めします。

 

もしご不明点等ございましたら

信頼できる税理士を紹介することも可能ですのでお気軽に一度ご相談ください。

 

豊田市で司法書士をお探しなら

司法書士スパークル総合法務事務所へどうぞ

 

丹羽