これまでの記事では、物権と債権の違いを整理したうえで、土地利用に関する権利として「地上権」「賃借権」「永小作権」について順に解説してきました。
これらはいずれも、他人の土地を一定の目的で利用する場面に関係する権利です。
今回は、同じく土地に関する物権の一つである「地役権」について取り上げます。
これまでの記事については、こちらをご覧ください。
・物権と債権の違い
・地上権とは?
・賃借権とは?
・永小作権とは?
■ 地役権とは何か
地役権とは、
他人の土地を、自分の土地の便益のために一定の目的に従って利用することができる権利です。
◆民法280条(地役権)
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。
たとえば、
・公道に出るために他人の土地を通行する
・自分の土地の日当たりや眺望を確保する
といった場合に利用されることがあります。
地役権のポイントは、ある土地の便利さを高めるために、別の土地を利用する権利であるという点です。
■ 要役地と承役地
地役権を理解するうえで、次の2つの用語が出てきます。
・要役地(ようえきち)
便益を受ける土地
・承役地(しょうえきち)
その便益のために利用される土地
たとえば、公道に接していない土地の所有者が、隣地を通行して道路に出る場合、
・通行によって利益を受ける土地 → 要役地
・通行を受け入れる土地 → 承役地
となります。
つまり、地役権は土地と土地との関係によって成り立つ権利です。
■ 地上権や賃借権との違い
地役権も地上権と同じく物権ですが、その内容は大きく異なります。
地上権は、他人の土地の上に建物や工作物、竹木を所有するために、その土地を使用する権利です。
これに対して地役権は、自分の土地の便益のために、他人の土地を一定の範囲で利用する権利です。
また、賃借権は契約によって他人の土地や建物を使用・収益する債権ですが、地役権は物権であるため、登記を備えることで第三者に対抗することができます。
つまり、
・他人の土地そのものを広く使用する権利 → 地上権
・他人の土地を契約で借りて使う権利 → 賃借権
・自分の土地の便益のために他人の土地を一定の目的で利用する権利 → 地役権
という違いがあります。
■ 地役権の具体例
地役権には、次のようなものがあります。
・通行地役権 公道に出るために他人の土地を通行する権利
・引水地役権
他人の土地を通じて水を引く権利
・排水地役権
他人の土地を通じて排水する権利
・眺望地役権
一定の眺望を妨げないようにするための権利
・日照地役権
日当たりを確保するために一定の制限を設ける権利
■ 地役権の成立
地役権は、主に
・契約による設定
・時効取得
によって成立します。
当事者間で「どの土地のために」「どの範囲で」「どのような目的で利用するのか」を定めて設定するのが一般的です。
そして、地役権は物権であるため、登記をすることで第三者に対抗することができます。
たとえば、承役地が第三者に売却された場合でも、地役権の登記があれば、新しい所有者に対してもその権利を主張することができます。
■ 地役権の特徴
地役権には、次のような特徴があります。
① 要役地のための権利である
地役権は、地役権者個人のための権利というよりも、要役地の便益のための権利です。
そのため、要役地が譲渡されれば、原則として地役権もこれに従います。
② 一定の目的・範囲に限られる
地役権は、承役地を自由に使える権利ではありません。
設定された目的や範囲に従ってのみ行使することができます。
たとえば、通行地役権が設定されている場合でも、承役地全体を自由に使えるわけではなく、通行に必要な範囲に限って利用できることになります。
③ 物権であるため対抗力がある
地役権は物権です。
そのため、登記を備えることで第三者に対抗することができます。
この点は、債権である賃借権との大きな違いです。
■ 相続や売買との関係
地役権は物権であり、土地に付随する性質を持つため、相続や売買の場面でも重要です。
要役地の所有者が亡くなった場合には、その土地とともに地役権も相続の対象となります。
また、要役地が売却された場合にも、原則としてその地役権は土地とともに移転します。
一方で、承役地を取得する側にとっては、登記された地役権の有無を確認することが重要です。
地役権が設定されていると、土地の利用方法に制約が生じる場合があるからです。
■ まとめ
地役権とは、他人の土地を自己の土地の便益のために一定の目的に従って利用することができる物権です。
地上権のように土地そのものを広く使用する権利ではなく、
賃借権のような契約上の権利とも異なり、
土地の利用関係を調整するための物権であるところに特徴があります。
将来のトラブルを防ぐためにも、
土地の利用関係は契約書や登記によって明確にしておくことが重要です。
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