2023年2月24日 2:56 pm

これまでのブログで相続関連の情報を掲載しておりましたが、基本的な遺産の分割方法について改めて説明させていただきたいと思います。

 

家族のどなたかが亡くなった場合、相続手続を行う必要があります(亡くなった方は「被相続人」といいます)。

 

相続人がどのくらいの遺産を受け取れるかは、被相続人が有効な遺言書を残しているかどうか、残していない場合でも分け方によって異なってきます。

 

 

1 遺言があり、それに従う場合

 

被相続人が生前に遺言書を作成しており、法的に有効な場合は、その遺言書に基づいて遺産分割をすることができます。

 

遺言者は自分の死後の財産の分け方について希望を書くことができます。

法定相続分どおりに分割したら何かと不都合がある場合や、遺産分割で相続人たちが揉める可能性が高いと心配される場合などは、あらかじめ遺言を作成しておくことが望ましいです。

 

遺言にはすべての財産の分配について記載する必要はないため、例えば経営している会社の株式や自宅不動産といった一部の財産についてのみ記載されている場合もあります。

遺言書に記載のない遺産の分け方については、別途協議が必要となります(⇒「3.遺産分割協議」をご参照ください)。

 

 

 

2 法定相続分どおりに分割する場合

 

遺言がない場合法律で定められている取り分があり、これを「法定相続分」と言いますが、これは誰が「法定相続人」になるかで割合が変わってきます。

 

「法定相続人」になる順番は以下のとおりで、第1順位がいないときは第2順位が、第1順位も第2順位もいないときは第3順位が相続人となります(※配偶者はこの順位とは別に、常に法定相続人になります。ただし、婚姻届の提出をしていない内縁関係や事実婚では法定相続人になれません)。

 

≪法定相続人の順位

第1順位:直系卑属(被相続人の子。子がいない場合は孫)

第2順位:直系尊属(被相続人の父母(養父母も含む)、父母が全員いない場合は祖父母)

第3順位:傍系血族(被相続人の兄弟姉妹。いない場合は甥姪)

 

≪法定相続人と法定相続分≫

① 配偶者+子              ⇒ 配偶者:1/2、子:1/2

② 配偶者+親              ⇒ 配偶者:2/3、親:1/3

③ 配偶者+兄弟姉妹           ⇒ 配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4

④ 配偶者のみ(第1~3順位がいない)  ⇒ すべて配偶者

⑤ 第1順位のみ(配偶者がいない)    ⇒ すべて子(もしくは孫)

⑥ 第2順位のみ(配偶者・子がいない)  ⇒ すべて親(親が全員いない場合祖父母)

⑦ 第3順位のみ(配偶者・子・親がいない)⇒ すべて兄弟姉妹(もしくは甥姪)

※子・親・兄弟姉妹がそれぞれ複数の場合は、その人数で相続分を分割する

 

≪例1≫

「男性が亡くなって、家族に妻と子供二人がいる」場合、妻が2分の1、残りの2分の1を子供二人で分ける、というのが法定相続分となります。

 

≪例2≫

「妻を以前に亡くした男性が亡くなって、子供が3人いる」場合は、子供が3分の1ずつ取得する、というのが法定相続分となります。

 

 

 

3 話し合いで分割を行う場合 = 遺産分割協議

 

上記2の法定相続分とは関係なく、法定相続人が話し合って遺産分割について決めることができます。これを「遺産分割協議」といいますが、これは相続人全員で行わなければなりません。一部の相続人を外して行われた協議は無効となります。

 

相続人全員が納得していれば、例えば「母親が全ての財産を相続して子供たちは何ももらわない」とすることも可能ですし、「長男が全ての財産を相続する代わりに兄弟に金銭を支払う」ということも可能です。

 

協議が成立したことを証するため、遺産分割協議書を作成して合意内容を明記します。協議書には相続人全員の実印による押印と印鑑登録証明書が必要になります。

 

協議書の作成は、すべての財産の分配を確定するまで待つ必要はなく、「この不動産は先に長男が相続する」「この有価証券は長女が相続する」といくつかに分けて協議書を作成することもできます。

すべてもしくは一部の遺産の分配について協議が調わない場合は、家庭裁判所の調停や審判で解決を図ることになります。

 

また、遺言がある場合でも、分割協議を行うことは可能です。

亡くなられた方の遺志ですので遺言を尊重する相続人が多いですが、遺言の内容について納得できない相続人がいたり、遺言内容が非合理的だったりすることもあります。

その場合は、遺言の内容は参考にしつつ、法定相続人全員で遺産分割協議を行うことができます。

一部の財産については遺言どおり、他の財産については分割協議を行う、ということも可能です。

 

 

遺言があっても、法定相続人の「遺留分」を侵害している場合などもあり、遺産の分け方については注意が必要です。

遺留分について : 相続・遺言書作成・会社登記|愛知県豊田市 司法書士スパークル総合法務事務所 (sparkle-jslo.com)

 

遺産をどういう方法で分けるか、については、

相続時の遺産の分け方について② ~財産の分割方法~ をご参照ください。

 

スタッフ 斉藤