今回は、かなり昔(明治~昭和初期頃)に設定された、古い抵当権の抹消についてご紹介したいと思います。
■古い抵当権……休眠担保権/休眠抵当権■
土地や建物などの登記簿を見ていて、かなり昔の抵当権に関する情報を目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
現在の登記簿に、例えば
「明治30年5月12日登記 債権額:50円 抵当権者:●●郡●●町●●番地 ●山●夫」などと、相当古い抵当権が残っていることが時折あります。
このような、明治・大正・昭和初期などに設定され、現在でも抹消されることなく残存している古い抵当権等のことを、「休眠担保権」または「休眠抵当権」などと呼びます(本稿では以下「休眠担保権」といいます)。
■休眠担保権の抹消■
どんなに魅力的な不動産であっても、抵当権がついている状態の不動産購入に抵抗を感じる買主は、一定数いらっしゃいます。そのため、売買に先立って抵当権抹消手続を行うのが一般的です。
戦前に設定されたような古い抵当権であっても、同様に不動産の買取を躊躇する買主もおられます。
売買のためにこの休眠担保権を抹消しようとしても、「昔過ぎて、抹消の手続方法が分からない」「借金が返済されたかどうかも、債権者がどこの誰かも分からない」などと戸惑い、そのまま放置される方は多いと思います。
その結果、売却できないまま、有効活用もできず塩漬け状態の土地となってしまいます。
そういった状況を避けるために、「供託利用の特例」という制度が設けられています。
■供託とは■
そもそも「供託」とは、簡単に言うと、本来は他の人に支払うべきお金を、国の機関である供託所に預けることで「支払ったことと同じ」ことにできる制度です。
家賃トラブルなどで供託を利用することが可能です。
たとえば、賃料月10万円で家を借りていたAさん。
家主が「来月から20万円に増額する」と言ってきました。
さすがにいきなり倍額は納得できないとして、Aさんはこれまでどおりの10万円を支払おうとします。
しかし、家主は「10万円なら受け取らない」として、受領を拒否します。
拒否されたまま支払わないと、Aさんは賃料不払いとして不利になり、追い出される可能性も出てきます。
追い出されることを避けるため、Aさんは供託所に毎月10万円を供託します。供託所から家主に通知してもらうことで、「Aさんは家主に毎月10万円支払っている」形ができあがり、Aさんは不利にはなりません(ただし、正当な賃料の金額については別途裁判などで確定することになります)。
「供託」には様々な種類がありますが、上記の例は「弁済供託」と言います。
他にも、裁判上や営業上の担保としての供託や、強制執行のための供託などもあります。
また、選挙に出馬する際にも、供託金を納める必要があります。
「供託利用の特例」の詳細については、別稿にてご紹介いたします。