2021年10月6日 2:36 pm

2018年の民法改正により、2020年4月1日に「配偶者居住権」という新しい制度が始まりました。

これは、自宅の所有者が亡くなっても、その配偶者が安心して引き続き自宅に無償で住めるというものです。

 

この「配偶者居住権」には、短期と長期の2種類があります。

短期は「配偶者短期居住権」と言い、後述する条件の①~③を満たしていれば、最短でも自宅持ち主(=被相続人)の死亡後6ヶ月間は住み続けられるというものです。

この「配偶者短期居住権」は特段の手続きは必要なく、被相続人の死亡(=相続開始)によって当然に発生します。

 

一方、長期は「配偶者居住権」と言い、遺産分割などでこの権利を取得することにより、配偶者は死亡するまでもしくは一定の期間、それまで住んでいた建物に引き続き住むことができるようになります。

 

例えば、

・遺産   :①自宅2000万円 ②預貯金3000万円 合計5000万円

・相続人  :配偶者(妻)および別居の長男の2人

・分割方法 :法定相続分どおり2分の1ずつ   という場合、

 

改正前の規定では、自宅2000万円も含んで2500万円ずつの相続という計算になります。

下図【改正前】のように配偶者が居住建物を相続した場合、取得できる預貯金が500万円となり今後の生活に少し不安が残ります。

だからと言って、自宅の土地建物を売却して現金化するのも、今後の住居費がかさんでしまいますので安心できるとは言い切れません。

 

改正後の規定では、自宅の建物を「配偶者居住権」「負担付所有権」と分割して、相続人がそれぞれ取得することが可能となりました。

 

下図【改正後】のように、配偶者は「配偶者居住権1000万円」「預貯金1500万円」を取得して、住居と以前より多い生活費を確保することができるようになりました。

長男は父親死亡時に相続できる預貯金は減ってしまいますが、「負担付所有権」を取得します。

これは母親が亡くなったら完全な所有権になるので、母親の死亡後は自分の財産として売却等処分することが可能になります。

このように、配偶者の生活を保護するための制度ですが、利用するには以下のような条件があります。

 

①法律婚上の配偶者である(内縁の配偶者は対象とならない)

②対象の居住建物が被相続人の単独所有、もしくは配偶者との共有である

③被相続人死亡時に、配偶者が対象の居住建物に住んでいた

④遺言もしくは遺産分割協議で、配偶者居住権を取得する必要がある

⑤第三者に対抗するためには、登記が必要。登記できるのは居住建物のみ(土地には適用されない)

 

特に最後の登記については、注意が必要です。

相続人同士で配偶者居住権と負担付所有権について合意していても、登記をしていなかったら、負担付所有権を取得した相続人が配偶者に黙って居住建物を売却してしまった場合、配偶者は買主に対して居住権を主張することはできません。

こういった事態を防ぐためにも、迅速な登記手続きが必要となります。

 

また、上図の事例ではわかりやすくするため、「配偶者居住権1000万円」「負担付所有権1000万円」としましたが、実際の配偶者居住権の価値評価は複雑な計算を必要とします。

配偶者居住権の設定が相続税対策になる場合もあれば、ならない場合もあり、また状況によっては配偶者居住権自体を設定しない方が良いこともあります。

 

まだ新しい制度ですし、複雑な計算が必要となる場合もありますので、配偶者居住権について検討されている方は、ぜひ一度司法書士にご相談ください。

 

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スタッフ 斉藤

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