2024年2月19日 9:00 am

 

 

令和4年の民法改正により、「嫡出推定制度」等の制度が見直しされ、2024年(令和6年)4月1日から施行されますので、ご紹介いたします。

 

■今回の見直しの大きなポイント■

1.婚姻の解消又は取消しの日(離婚や死別等)から300日以内に子が生まれた場合でも、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定する

2.女性の再婚禁止期間を廃止する

 

 

■嫡出子と非嫡出子■

嫡出子……婚姻関係にある男女間に生まれた子

非嫡出子……婚姻関係にない男女間に生まれた子

となります。

父親からの認知が得られない非嫡出子の場合、

・父親の相続人となることができない

・父親の氏を称することができない

・父親の扶養義務が発生しないため、養育費を請求することができない

といった問題点が生じます。

(非嫡出子の相続や認知に関しては、後日別稿でご紹介予定です)

 

 

■現行の嫡出推定制度とその問題点■

嫡出子と推定される要件としては、現在の民法では

① 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 (第772条)

② 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内 に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。 (第772条の2)

と定められています(この①、②に該当しない場合は「非嫡出子」とされます)。

 

②に関して、現在の規定では、婚姻の解消後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定されるため、前夫の子として扱われるのを避けるために出生届を出さない方もいます。その結果、子は無戸籍状態となってしまい、生きていくうえで様々な問題が生じていました。

 

届出しない理由について、無戸籍者のうち約73%が「他の男性との子を、前夫の子として戸籍に記載されたくない」と回答しています。この規定が無戸籍者問題の大きな原因との指摘もあって、今回見直しをされることとなりました。

 

 

■女性の再婚禁止期間について■

民法が施行された1898年から「女性は前婚の解消等の日から6ヶ月間再婚できない」とされていました。これは父性推定の混乱を防ぐことを目的とするものでした。

その後、2015年に違憲判決を受け、2016年に「100日間」に短縮されました。

しかし、嫡出推定規定の見直しを受け、DNA鑑定での父親特定が容易になったこともあり、今回の民法改正より、女性の再婚禁止期間は廃止となりました。

 

 

■見直しによる改善■

今回の見直しにより、母親が再婚した後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定されることとなります。出生届を出さない原因の一つが解消されます。

(再婚しない場合、離婚後300日以内に生まれた子は、従前どおり前夫の子と推定されます)

 

他にも、

●これまでは夫のみに認められていた嫡出否認権を、子及び母にも認める

●嫡出否認の訴えの出訴期間を、1年から3年に伸長する

といった規定が、同じくこの4月1日から施行されます。

 

嫡出推定制度に関する改正後の規定は、原則として施行日(令和6年4月1日)以後に生まれる子に適用されますが、施行日前に生まれた方やその母も、施行日から1年間に限り、嫡出否認の訴えを提起して、血縁上の父ではない者が子の父と推定されている状態を解消することが可能となる、とのことです。

 

 

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